第一準備書面

前回の被告が提出した答弁書に対して作成した、準備書面。
被告提出答弁書は項目分けがされておらず、どうしたらよいのか書記官の方に書き方を教わり作成しました。
相手の答弁書を読んで、金はどうでも良くなってきた。そしてこの様な前文に。でもこの思いがあったが為に、途中で投げ出すことなく頑張れました。

平成16年(ハ)第95号 未払賃金請求事件
原告 山田 太郎
被告 株式会社PA
準 備 書 面
平成16年10月8日
宗像簡易裁判所 御中
原告 山田 太郎

 原告は法律実務に関しては素人であります。書面、陳述等において正しい用語を用いる事が出来ない場合があるかと思いますが、その点は考慮願います。
 原告が知る限り、原告就労期間中に被告会社には八名もの人間が入退社を繰り返しており、その全員が会社の待遇に不満を持って去っているという状態です。またその多くがこれ以上の関わりを避けたいと、諸機関への報告すら行っておりません。中には心身共に疲れ果て、福岡を去って行った同僚もいます。この事態に対し、今ここで誰かが行動を起こさなければ原告はこの先も同じ事を繰り返し、多くの労働者に苦痛を与え続けることになります。その様な事にならない為にも、法律の専門家である裁判所の胸を借りて、本訴訟を意義あるものにしたいと思っております。

1. 原告は下記の理由により被告が提出した答弁書を否認します。
@ 就業時間について、面接時に確認したところ9時10分位前までに来てくださいとの口頭説明を受けていました。先の福岡東労働基準監督署(以下「監督署」という)での事情聴取においても被告は9時00分〜18時00分で申告、是正勧告を受けています。仮に8時30分からが就業時間ならば、監督署へは虚偽の申告をしたことになり、労働基準法(以下「労基法」という) 120条の3の罰則規定適用対象です。

A 休日について、労働条件通知書の交付も無ければ口頭での説明も入社時から退社時まで一切ありませんでした。

B 「経験者」希望に関して、福岡東職業安定所(以下「安定所」という)の職員が被告に対して未経験者であることの確認を事前に行っており、被告は了承した上で紹介を受けています。

C 採用後の待遇について、〔甲第1号証:求人公開カード〕を見てもらうとわかるかと思いますが、被告は正社員募集で安定所へ届けを出しており、私はその内容に対して応募しま

した。アルバイト、請負等の非正社員表記があった場合、応募はしていません。
被告は面接時にアルバイト採用の説明は一切しておらず、当然ながら私は了解していません。また、被告は監督署での事情聴取においては当初請負で雇ったと発言しており、監査官より「給与明細等があり5ヶ月も働いているのにそれはおかしい」と指摘を受け正社員とした上で是正勧告を受けています。

D 基本給に関して、面接時は「基本給はそんなに出せないが、少ない分は手当等で補える」との口頭説明だけで、被告答弁書に記載されているような具体的金額の提示は一切ありませんでした。
また被告は〔甲4号証:給与明細〕各月記載金額を基本給として申告、一部最低賃金法違反として是正勧告を受け、差額を原告へ支払っています。

E 残業届に関して、労働条件通知書の交付も無ければ口頭での説明も入社時から退社時まで一切ありませんでした。

F 〔甲第2号証:作業日報〕について、印刷の内容のみの記入であり、その他作業については記入してありません。

G 〔甲第3号証:出勤簿〕について、監督署が残業時間を全て認められずに是正勧告を出したのは、被告が勤務時間記録は存在しないと提出をしなかった為です。ですが先の陳述において被告は記録が存在すると発言しました。だとすれば労基法120条の3の罰則規定適用対象です。
また被告も認識している通り、使用者に対して賃金台帳の作成を労基法108条において義務付けています。ですが、被告会社にはタイムカード等時間管理をしている様子が見られなかった為、自己管理のために記録していたものを今回請求にあたり提出しました《参考判例:平成8年(ワ)第8075号、平成9年(ワ)第323号 東久商事事件》。

H 被告が答弁書において主張する原告の出勤時間と退社時間ですが、同時期会社に在籍していた人物を証人として尋問していただければ虚偽の内容であることが立証可能です。

I 〔甲第7号証:請負契約書〕について、被告は答弁書において「4月半ばに提案」、陳述において「その後いつまで待っても回答が貰えなかった」と発言していましたが、被告が提案してきた正確な日付は5月21日午前、今後は記載条件で働いて欲しいと請負契約

書にサインを強要しましたが、原告はその場で拒否、〔甲第1号証:求人公開カード〕内容通りの諸手当を要求しましたが被告は拒否。労基法15条を適用、退職の意思を告げ、給与の締日である25日を最後に退職しました。この件に関して、証拠が存在します。

J 被告は出勤簿での虚偽の例として「4月16日17時30分頃に声を掛けに工場に行った」と記載していますが、証拠の提出を求めます。

2. 原告の主張
@ 原告は、平成15年12月19日、安定所にて求人募集の紹介を受け、同月22日に紹介状、履歴書、〔甲第1号証:求人公開カード〕を持参して面接を受けました。
本来ならば被告は労基法15条に基づき労働条件通知書を交付しなければならないが、それを怠っています。
よって本件請求は、職業安定法5条の3第2項に基づき、面接時にお互い目を通した〔甲第1号証:求人公開カード〕記載の条件を適用《参考判例:昭和58年(ヨ)第1580号 千代田工業事件》、監督署からの助言をもとに労基法32条を基準に算出してあります。

A 原告就労期間中に、一度も時間外労働に対する割増賃金の支払が行われておらず、平成16年2月給与明細を見て時間外賃金が支払われていない旨を問うと、被告は基本給の中に含まれていると回答してきました。
〔甲第4号証:給与明細〕16年5月度給与においては3月、4月の時間外手当の一部が何の前触れも無く突然支払われ、根拠を問うと「仕事内容を見てこれだったら払っても良いかなと言う分だけ」というだけで、具体的な根拠や算出方法等の説明はもらえませんでした。
またその時に今まで時間外手当が払われてなかった事を改めて問いただすと「残ってしないといけないような内容ではなかった」、「動作が遅いから」、「居た時間全部を払えと言うのはおかしい」、「残っても出来ず、翌日して、結局技術の未熟な分まで全部私達に払えと言うのか?」等、法に触れかつ時間外労働の存在を把握している発言をするものの、法的根拠に基づく説明はありませんでした。この件に関して、証拠が存在します。

B 先にも書きました通り、原告就労期間中に被告会社には八名もの従業員が入退社していましたが、そのいずれもが時間外労働に対する割増賃金の支払を会社から受けていないのを確認しています。

C 被告は従業員を採用してから5日以内に社会保険、労働保険の加入手続きを行わなけ

れば成らないのに、それを怠っており健康保険法161条、厚生年金保険法82条、労働保険徴収法30条に違反しています。
原告は安定所に労働保険のひとつである雇用保険の加入手続きの有無に関する確認を行ったが、未加入であったことが判明。よって安定所を通し被告へ5ヶ月を遡っての加入請求手続を行い、平成16年8月11日に保険証が交付されました。また、当時一緒に働いていた他の社員三名の給与明細によると雇用保険の名目で賃金が差し引かれていましたが、安定所の資料では一名しか加入していないという事実が確認されています。

D 原告就労期間中、毎朝個人思想に基づく「祈り」を強要、被告が所属する宗教団体の集会参加を強要されたこともあり、日々精神的苦痛を強いられていました。

以上

参考判例:平成8年(ワ)第8075号、平成9年(ワ)第323号 東久商事事件
被告会社が従業員の出退勤の管理をしていなかったことにより、時間外労働の時間数が正確に計算できない本件につき、原告の書証記載の時間残業したものとして、割増賃金の支払が命ぜられた例。
これは、そもそも、正確な労働時間数が不明であるのは、出退勤を管理していなかった被告会社の責任であるともいえるのであるから、正確な残業時間が不明であるからといって原告の時間外割増賃金の請求を棄却するのは相当でない、となっている。

参考判例:昭和58年(ヨ)第1580号 千代田工業事件
内容を簡単に書くと、
労働契約締結の際には労働条件を明示しなければならないのだが、明示する使用者が少ないのが実態。しかし、公共職業安定所の紹介によって成立した労働契約である場合、労働条件通知書等で変更箇所を明示していないのであれば、求人票内容をそのまま労働条件の内容として契約したものと理解するとした例。

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