第4準備書面提出

これまで全ての被告側主張内容を弁護士さんがまとめ上げた書面を、準備書面という形で提出した。

平成16年(ハ)第95号 未払賃金請求事件
原告 山田 太郎
被告 株式会社PA
第3準備書面
平成17年5月16日
宗像簡易裁判所 民事係 御中
原告訴訟代理人弁護士 ○○ ○○

原告は,下記のとおり
  2004年9月29日付被告作成答弁書
  2004年11月8日付被告作成答弁書
  200411月29日付被告作成準備書面
における被告の主張をまとめる(但し,原告の主張に対する認否は第3準備書面にまとめた。)。
  また,これに対する原告の認否を行う。
  ところで,上記被告の主張は,大きく分けると@賃金についての主張,A下請契約への変更についての主張,B休日出勤,欠勤,についての主張,C養業,遅刻,早退についての主張,Dその他(証拠評価についてなど)に分けられるように思われる。そこで,この5つに分類してまとめる。

第1 @賃金について
1 2004年9月29日付被告作成答弁書
(1)求人公開カード(甲1)にあるとおりの技能を持った「経験者」を募集していたので,未経験者だった原告は,アルバイトとして採用された。最初の3ヶ月は「基本給7万円,手当無し。」である。それ以降,正社員にするかは,働きをみて決める。
2 2004年11月8日付被告作成答弁書の被告の主張
(2)原告が未経験者であることは承知していた。だが,原告が「前の仕事は車の運転だけだった,夜勤をしたくない,印刷技術を身につけたい」と言ったため信用して採用した。
(3)原告はアルバイトであった。退社まで正杜員としての給料を請求されたこともない。労基署が被告に対して,4,5月はアルバイトとは考えにくいと指摘したことはある。
(4)(前回の答弁書と同様の主張)最初の3ヶ月は「基本給7万円,手当無し。」である。
3200411月29日付被告作成準備書面
(5)被告は,原告に2月に10万円,3月に13万円払っている。しかし,原告はアルバイトであり,正杜員としての処遇ではなく,生活保障として払ったものである。
  杉山さんには,入社直ぐに13万円払っているが,これも生活保障である。
理由は,祖母が入院しており8万円かかるからということであった。なお,杉山さんは,給料をもらうとその直後に退職してしまうような人です。
4 以上についての原告の認否
(1)否認する。被告と雇用契約を締結した当初から,原告は正社員であった。
また,基本給に関しては,平成15年12月22目の面接時に,「基本給はそんなに

出せないが,少ない分は手当等で補える」との口頭説明があっただけで,被告主張のような具体的な話は一切なかった。
  原告が正杜員であったといえる理由は以下である。確かに,求人公開カードには「経験者希望」と記載されていた。そこで,原告は,福岡東職業安定所の職員に被告に電話をかけてもらい,原告が未経験者であるが雇用する意思があるかを事前に確認してもらった。被告が未経験者でも雇用する意思があるということであったので,原告は平成12月22日,被告事務所に赴き,被告との間で雇用契約を締結したものである。
  原告は,求人公開カードに正社員の募集と記載されていたからこそ被告会杜に応募したものである。アルバイト,請負等の非正杜員の求人であれぱそもそも応募しなかった。求人公開カードにアルバイトの記載がないことはもとより,被告との平成15年12月22日の面接時にもアルバイト採用の説明は一切なかった。
  また,被告は,監督署での事情聴取においては,当初原告を請負で雇ったと発言しているのであり,アルバイトで雇ったとは発言していない。なお,被告は,結局,監査官より「給与明細等があり5ヶ月も働いているのにそれはおかしい」と指摘を受け正杜員とした上で是正勧告を受けている。
(2)被告が原告を未経験者であると承知していたことは認める。原告が「前の仕事は車の運転だけだった,夜勤をしたくない,印刷技術を身につけたい」と言ったという点は否認する。
(3)原告がアルバイトであったことは否認する。第2文については,被告の主張する「正杜員の給料」が何を意味するものか理解できない(おそらくは,手当が付くということであろうと思われるが)ので認否を留保する。「正杜員の給料」の意味について明らかにして頂きたい。
(4)否認する。なお,原告は,被告から,いかなる内容が記載されたものであれ労働条件通知書を交付されていない。また,口頭で基本給について具体的な話はな

かった。
(5)第1文については求める。第2文については「生活保障」の意味が分からないので認否を留保する。
  第3一文については不知。

第2 A下請け契約への変更についての主張
1 2004年9月29一日付被告作成答弁書の被告の主張
(1)原告は出社時間,退社時間ともいい加減だった。具体的には2ぺ一ジ8行目以下にあるが,おおむねは以下のとおり。
  朝いないので打ち合わせが出来ない。
  昼もいないので伝達事項が伝えられない。
  夕方,印刷物を出荷するときに姿を見たことはないので残業もしていない。
  あいさつもしない。
  さらに上記の各事情に加えて,原告は,依頼された仕事をしないし,2月
2日には故意に2枚差し防止スイッチを切って不良品を出したこともある。
さらに,2月26日淀工業の伝票は不良品と知って出荷した。また,4月1
日あずさや伝票200冊の内60冊をかくして捨てた。他にも損害有り。
  よって,被告は,原告を正祉員にはできなかった。
  4月半ばから委託契約への切り替えを勧めた。
2 2004年11月8日付被告作成答弁書の被告の主張
(2)4月半ばから下請け契約を勧めてきた。
  しかし,サインを強要したことは1度もない。
  5月21日に,諸手当の要求は受けていない。
(3)業務日誌2を書かせたのは原告が故意に不良品を出していたからである。
(4)原告は,業務日誌2に,5月11日,17日,18日,20日について

は実際より多い数字を書いている。
3 以上に対する原告の認否
(1)否認する。
  なお,委託契約への切り替えは,5月21日午前にいきなり被告から提案があった。
被告は,「今後は記載条件で働いて欲もらう。」と請負契約書にサインを強要した。
原告はその場で拒否し,求人公開カードの内容通りの諸手当を要求しましたが被告は拒否した。そこで,原告は被告からの解雇があったと考えてそれに応じることとした。
(2)否認する。.
  5月21日午前に下請契約に変える話があるまには,原告,被告間では,一度もそのような話はなかった。
(3)業務日誌2を書いていたことは認め,それ以外は否認する。
(4)否認する。

第3 B休日出勤,欠勤についての主張
1 2004年9月29日付被告作成答弁書の主張
(1)休日について。日曜,祭日は休日である。土曜日は,月2回のやすみが決まっているわけではなく,忙しいときは出勤することになっていた。
22004年11月8日付被告作成答弁書
(2)休日については,被告は面接時に説明した。日曜,祭日,月2回土曜である。
なお,上記条件は,事務所のカレンダーに明示した。
(3)1月17日は原告は休みである。
  なぜなら,労基署が1月分の不足額について被告主張のとおり18日で計算しているからである(乙8)。

 甲3は全くの「偽造」である。
4 以上に対する原告の認否
(1)日曜,祭日が休みであることは認める。土曜が休みでなかったことについては,毎月2回の限度で否認する。
  理由は,求人公開カードの条件で契約したからである。休日に関して,求人公開カードとは異なる条件の説明は,退社するまで受けたことはない。
  なお,被告主張の条件を明示した労働条件通知書の交付などはない。
(2)第1文は認める。
  なお,第1文は9.29答弁書とは異なる主張である。被告の誤解によるのではないかと思われるので被告の意図を明らかにしていただきたい。
  第2文は不知。
(3)第1文は否認する。
  第2文は認めるが,その事実と1月17日に原告が実際に休んだかどうかは関連性はない。
  第3文については,被告が「偽造」という言葉をどの様な趣旨で使っているかが分からないので認否を留保する。

第4 C残業,遅刻,早退についての主張
1 2004年9月29日付被告作成答弁書の主張
(1)就業時間は8時半から17時半である。
(2)被告会杜においては,従業員が残業するときには,事前に上司の許可印をうけた残業届を提出し,事後に残業報告書を出すことと定められていた。
(3)原告は,被告に入社から退社するまで1度も残業届を出したことはない。
(4)原告は出社時問,退社時間ともいい加減だった。残業はありえない。具体的には2ぺ一ジ8行目以下に詳細に書かれているが,おおむね以下のとおり。

 朝いないので打ち合わせが出来ない。
  昼もいないので伝達事項が伝えられない。
  夕方,印刷物を出荷するときに姿を見たことはないので残業もしていない。
  あいさっもしない。
  4月16日は17時半ころから宗像のロイヤルホストに児島,渋沢,江川,専務,社長の5人で行ったが,既に原告は帰宅していた。
2 2004年11月一8日付被告作成答弁書
(5)被告会杜には出勤簿はない。これは,出光石油の創業者の考えに習ってのことである。
  この4年問,最も長く働いている社長と専務の月給は,それぞれ12万円,8万円だけである。賞与もない。
(6)就業時間は8時半から17時半である。
  原告は9時半から10時半頃に出社することが多かった。
  労基署から,就業時間についての指導,是正勧告を受けたことはない。
(7)被告は,残業届けの用紙(乙1)を原告に見せていた。
(8)被告は,原告の印刷予定が8時問以内で終わるように配慮していた。
川崎君,山内君は,共に入社1年ほどであったが,原告の2倍から3倍ほど仕事をしていた。
(9)原告の勤務態度はひどい。例えば,4月30日午後に私立病院の小冊子の丁合の指示を原告に出したが,原告はこれに指示に従わず勝手に会社からでていったことがあった。そのため,2日納期がおくれた。
  後日,東機械さんが原告使用機械について「2枚差しスッチがわざとは
ずされている」と言っていた。
(10)原告は印刷業務だけをおもにしていた。他の人を手伝ったり新しい仕事を覚えようとせず,失敗も他人のせいにするので,誰からも相手にされていま

せんでした。
(11)4月16日に17時半頃工場を閉めて他の授業員とロイヤルホストに行ったときに,原告は帰った後であり,近所に住む原告を誰も誘わなかった。
  3月末にも原告を誘ったことがあるがこの時も原告は帰った後だった。
3 2004.11.29被告作成準備書面における被告の主張
(12)東機械サービスの東さんは,原告の使っていた機械は初心者でも1月で印刷できるようになると言っています。
  被告が平成15年11月に初めてこの機械を使ったときも,適切な時間で作業ができた。15時半には中華料理屋に撮影にいっているので,残業が必要ではなかったことが分かる。
(13)6年前には残業があったが,今はない。
(14)原告は断裁もしないし梱包もしない。8時間以内に終わる仕事しかしていない。ほとんどは2から5時間で終わる。
4 以上に対する原告の認否
(1)否認する。
理由は,以下である。原告が,平成15年12月22日の面接時に,就業時間について確認したところ,9時10分位前までに来てくださいとの説明であった。また,被告は監督署の事情聴取に対して,就業時間は9時00分〜18時00分であると申告している。
(2)否認する。残業届に関して,労働条件通知書の交付も無ければ口頭での説明も入社時から退社時まで一切ありませんでした。
(3)認める。
(4)否認する。
(5)第1項第1文は認める。第2文は不知。
  第2項については,社長と専務が最も長く働いていることは否認する。そ

れ以外は不知。

(6)第1文は否認する。10月8日準備書面にも書きました通り,原告は,採用面接時には「9時10分くらい前に来てください」と説明を受けていた。また,職場慣習として,就業開始時刻は9時00分からとなっていた。
  第2文については否認する。
  第3文については,、認める。
但し,確かに,被告は就業時間についての指導,是正勧告を受けたことはないが,従業員への残業代未払いを理由として労基署の指導,是正勧告を受けたことはある。そして,そのための労基署の調査の際に,労基署は被告の就業時間が9時00分〜18時00分であることを前提として残業代の算出を請求した。この請求に対して被告は異議を申し立てなかった。よって,被告においても,契約によるものか慣習によるものかはともかくとして,実際には,就業時間は9時00分〜18時00であつた。
(7)否認する。残業届というような書面は一度も日にした事はない。

(8)第1項については否認する。
  第2項については不知。
(9)第1項第1文は否認する。第2文についても否認する。4月30日は,午前中の仕事が遅くまでかかったので,原告は,午後にいったん外に出て食事をした。しかし,原告は,外に出る時に,被告から,午後は病院の小冊子の仕事を手伝うように指示されたため,軽く食事をとり,往復に掛かる時間も含めて30分ほどで帰社した。
(10)否認する。
(11)否認する。
(12)不知。

(13)6年前に残業があったことは不知。現在残業がないことは否認する。
(14)否認する。

第5 D被告のその他の主張,意見など
1 証拠についての被告の意見
(1)2004年9月29日付被告作成答弁書での被告の意見
ア 甲2は,被告作成の作業日報と食い違いが多く信用性無い。
イ 甲3は信用性が無い。それは,本来会社が作るべきものであるのに勝手に原告が作っていることと,及び根拠が記されていないことゆえ。
  福岡東労働基準監督署が原告主張の残業時間を認めなかったのも甲3に信用性がないからではないか。
(2)2004年11月8日付被告作成答弁書での被告の意見
ア 甲2が信用性に欠けるのは,原告がこれを毎日管理者に提出していなかったからである。
  甲2では,1月17日,2月1日が出社になっているが,原告は出社し
ていなかった。
イ 労基署は1月分の不足額にっいて被告主張のとおり18日で計算している(乙8)。このことから,原告は1月17日は出社していなかったとい
える。
(3)2004.11.29付け被告準備書面における被告の意見
ア 4月16日はロイヤルホストにいくため工場は閉めていた。だから原告が残業を出来るはずがない,原告作成の「出勤簿」(甲2)は作為,捏造である。
イ もし残業を本当にしたのなら,退社してから突然言うのではなく,毎月
給料日に何故言わなかったのか。それは残業をしてなかったからではないか。

2 以上に対する原告の意見
(1)ア 確かに,甲2は,被告作成の作業日報と食い違いが多い。しかし,被告作成の作業日報がどのような経緯で作成されたのか分からないので,被告の作成日報との整合性が無いことを持って甲2の信用性は弾劾できないと考える。
イ 甲3号証について監督署が残業時間を全て認められなかったのは,甲3が信用性が無かったからというよりは,被告が勤務時間記録は存在しないと言って提出をしなかった為です。
(2)ア 甲2号証は,就業期間中に記入したものです。2月1日はその当時の記入間違いです。そのためかわりに2月2日が空白になっています。だから,2月1日の間違いがあるからといって,甲2の全体的な信用性が無いということにはなりません。このことは,甲第3号証においては2月1日が空白,2月2日に記入してあることからもわかるかと思います。
また,1月17日は,以下に述べるとおり(イ参照),実際に出社している。
イ 労基署が調査に入った時には,確かに,1月の出社日数については18日として計算された。原告としても,乙8の信用性については争わない。しかし,労基署が18日と判断したのは,労基署に対して,被告が「勤務時間記録は存在しない」と言って,勤務時間記録を提出しなかった為,労基署としては,他に証拠もないので被告の主張通りに18日としたにすぎない。この際,原告に対して,労基署は「1月の出社日数にっいて真剣に争うのであれば,後は民事裁判をして下さい。」とアドバイスをしている。このことからも,労基署が積極的に1月の出社日数が18日であると確信していたのではないと分かる。
だから,乙8を根拠として甲2の信用性を否定することは出来ないと考える。
(3)ア 被告の意見が成り立っには,前提として,被告らが,その日ロイヤルホストにいったことが必要であるが,そのことが立証されていない段階

では被告の意見は単なる空論に過ぎない。
イ 被告の会社がどうかはともかく一般的にいって,従業員が退職するまで会社に対して強い態度ででれないことはよくあることである。よって,被告の意見は一般的にはなりたたない。仮に,特に被告の会社では,従
業員が在職中に社長に何でもいえる雰囲気があるのであれば,被告に於かれては,そのことを何らかの手段で立証されたい。

以上

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