第6準備書面提出

争点について、弁護士さんなりにまとめたものを第6準備書面として提出。

平成16年(ハ)第95号 未払賃金請求事件
原告 山田 太郎
被告 株式会社PA
第6準備書面
平成17年5月17日
宗像簡易裁判所 民事係 御中
原告訴訟代理人弁護士 ○○ ○○

 原告は,本件の争点と審理についての意見を下記のとおり申し上げる。
  なお,争点の把握,審理の進行とも裁判所の権限かつ職責であることは十分承知しております。そこで,本書面は,あくまでも裁判所に於かれまして,ご判断の一助にしていただきたく作成したものです。

第1 原告の請求に対する被告の反論は,大きく分けると@賃金額についての主張,A下請契約への変更についての主張,B休日出勤,欠勤,について二の主張,C残業,遅刻,早退についての主張,Dその他(証拠評価についてなど)に分けられるように思われることは,既に,第4準備書面でのべたところである。すなわち,本件の争点は上記@ないしDに収飲すると思われる。
  そこで,これら争点ごとに分けて意見を申し上げる。

第2 @は,当事者問の契約内容がどのようなものかである。
1 立証責任は,原則として,原告にある。
  一般的には,直接的な証拠としては契約書が考えられる。だが,本件では,契約書がない以上,間接的な証拠をもって認定されることになる。
2 基本給については,そもそも,原告は,基本的には,給与明細又は最低賃金以上のものは求めていないのであるから,これ以上,特段の立証は不要ではないかと考える。
3 手当が争点になる。原告としては,求人公開カードの記載を1つの証拠としたいと考えている。
  求人公開カードからの事実上の推定については,昭和58年大阪地方裁判所決定(昭和58年(ヨ)第1580号事件(千代田工業事件))が参考になるのではないかと考えている。
4 また,そもそも,この問題が争点になるのは,被告が,労働基準法第15条第1項,同法施行規則第5条第2項第3項に違反して労働条件通知書を原告に交付しなかったことによって生じているのだから,原告の立証責任が緩和されるのではないか,そうであればどの程度緩和されるのかについても,現在検討中である。

第3 Aは,平成16年5月21日の,被告の,原告に対する下請契約への変更の申し入れを法的にどのようなものとして評価するかの問題である。
  この点については,既に,解雇と新しい契約の申し込みであると評価すべきことは申し上げている。
  第4 B,Cは,本件請求を基礎付ける原告による労務の提供の事実があったかどうかということである。
  民法624条第1項の.「労働者は・・…労務を終わりたる後に非ざれば

報酬を請求することを得ず」及び所謂労働法理上の原理である「ノーワーク・ノーペイの原則」からすると,賃金支払請求権を基礎付ける労働者による労務の提供の事実については,労働者がその立証の責任を負うのが原則である。
  とはいえ,通常は,労働者が労務の提供を立証するには使用者から賃金台帳,出勤簿などの提出を受けて行うことになる。
  本件請求についていうと,本件請求を基礎付ける原告による労務の提供の事実については,原告カ、その立証の責任を負うのが原則である。そして,原告としては,被告から賃金台帳,出勤簿などの提出を受けて労務の提供を立証したいと考えているところである。
  ところが,被告は,現在まで,賃金台帳を提出していない。また,出勤簿については,乙14として提出されているが,一方2004.11.8付答弁書では被告会社には出勤簿はないと主張されており,このことからすると,乙14の信用性については疑問がある。
  このため,原告は,現在のところ,甲3以外には,有効な立証方法を思いつかないところである。
  しかし,参考になる裁判例として,東京高等裁判所平成3年1月30日判決(平成2年(ネ)第2730号)及びその原審である東京地方裁判所平成2年7月24日判決(平成1年(ワ)第4789号)がある。
  これらの裁判例は保険金請求事件についての裁判例であり,被保険者が,保険者に対して,一旦保険休止状態が生じた後において遅滞分割保険料等の支払があったことを理由として保険金の支払を求めたものである。裁判例では,被告が,実体法上の義務に違反して,原告に受領日時を明記した弁済受領書を交付していなかったことをもって被告に証明妨害の制裁を科し,その分,原告の立証責任を軽減する可能性が示唆されている(但し,結論は分かれている。)。
  原告としては,上記の2つの裁判例を分析しているところである。

 ところで,仮に甲3をべ一スとして立証していくことになるとすると,原告作成の書面をもって原告の主張を認定していくことになるが,大まかな点はともかく,細かい点まで完全に甲3によって基礎付けられるかについては疑問もある。このことについては,大阪地方裁判所平成10年12月25日判決(平成8年(ワ)第8075号平成9年(ワ)第323号事件(東久商事事件)が,「原告作成の『ある程度平均化された大雑把なとらえ方』の書面をもって原告の請求を認める証拠としており,このことが,本件でも参考になるのではないかと考えて,現在,分析中である。

第5 Dについては,結局,経験則の問題であるから,原告としては,既に述べた
意見を申し上げて,その上で,裁判所の賢明なご判断を頂きたいと考えている。

以上

OCRソフトでのテキスト化のため、誤植の含まれている可能性がある。

inserted by FC2 system